近年、企業の脱炭素化への取り組みが加速する中、再生可能エネルギー由来の電力調達方法として「オフサイトPPA」が注目を集めています。この記事では、オフサイトPPAの仕組みや特徴、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

オフサイトPPAの基本

オフサイトPPA(Power Purchase Agreement)とは、企業(需要家)が自社の敷地外に設置された再生可能エネルギー発電設備から長期契約で電力を調達する仕組みです1。主な特徴は以下の通りです:

  1. 発電設備は需要家の敷地外に設置
  2. 一般送配電事業者の送電網を利用して電力を供給
  3. 通常10〜20年程度の長期契約
  4. 小売電気事業者を介して契約を締結

オンサイトPPAとの違い

オフサイトPPAの特徴をより理解するために、オンサイトPPAとの違いを比較してみましょう2

項目オフサイトPPAオンサイトPPA
発電設備の設置場所需要家の敷地外需要家の敷地内
電力供給方法送電網を利用直接供給
設備規模大規模化が可能敷地の制約あり
非常用電源としての利用困難可能
再エネ賦課金発生する発生しない

オフサイトPPAのメリット

  1. 大規模な再エネ電力の調達:敷地の制約がないため、大規模な発電設備からの電力調達が可能です3
  2. 初期投資不要:発電設備の設置・運用は発電事業者が行うため、需要家の初期投資は不要です4
  3. 長期的な電力価格の安定:長期契約により、将来の電力価格変動リスクを軽減できます5
  4. 環境価値の獲得:再生可能エネルギー由来の電力を調達することで、企業のサステナビリティ目標達成に貢献します6
  5. 複数拠点への供給:一つの発電設備から複数の需要拠点に電力を供給できます7

オフサイトPPAのデメリット

  1. 長期契約のリスク:15〜20年程度の長期契約が一般的で、事業環境の変化に柔軟に対応しにくい面があります8
  2. コスト面の課題:送電網の利用料や再エネ賦課金などが発生するため、必ずしも電気料金の削減にはつながらない場合があります9
  3. 契約の複雑さ:発電事業者、小売電気事業者、需要家の3者間での契約調整が必要となり、交渉が複雑になる可能性があります10

オフサイトPPAの導入前後の変化について、具体的な実例をいくつか紹介します。

導入事例1: 住友商事

住友商事は、オフサイトPPAを活用して自社の複合型オフィスビル「KANDA SQUARE」に再生可能エネルギー電力を供給しています1導入前:

  • 通常の電力会社からの電力供給
  • CO2排出量: 不明 (従来の電力供給による排出)

導入後:

  • 年間187万kWhの再生可能エネルギー電力を調達
  • CO2排出量削減: 約730トン/年

この事例では、オフサイトPPA導入により、大規模なCO2排出量削減を実現しています。

導入事例2: ヒューリック

不動産会社のヒューリックは、フィジカルPPAを活用して自社ビルに再生可能エネルギー電力を供給しています2導入前:

  • 通常の電力会社からの電力供給
  • 再生可能エネルギー比率: 低い

導入後:

  • 2024年にRE100達成(自社使用電力の100%再エネ化)を目指す
  • 2030年までに全保有建物からのCO2排出量ネットゼロを目指す

この事例では、オフサイトPPA導入により、企業全体の再生可能エネルギー比率を大幅に向上させる計画を立てています。

導入事例3: セブン-イレブン・ジャパン

セブン-イレブン・ジャパンは、環境省の補助事業を活用してオフサイトPPAを導入しています3導入前:

  • 通常の電力会社からの電力供給
  • 再生可能エネルギー比率: 低い

導入後:

  • 複数の店舗に再生可能エネルギー電力を供給
  • 具体的な数値は公表されていないが、CO2排出量の削減と再生可能エネルギー比率の向上を実現

この事例では、小売チェーンの複数拠点に対してオフサイトPPAを活用し、企業全体の環境負荷低減を図っています。これらの事例から、オフサイトPPA導入により以下のような変化が見られます:

  1. CO2排出量の大幅な削減
  2. 再生可能エネルギー比率の向上
  3. 長期的な環境目標達成への貢献
  4. 複数拠点への再生可能エネルギー供給の実現

ただし、具体的な数値が公表されていない事例も多いため、導入前後の正確な比較が難しい場合もあります。また、オフサイトPPAの効果は企業の規模や事業特性、導入規模によって大きく異なる点に注意が必要です。

まとめ

オフサイトPPAは、大規模な再生可能エネルギー電力の調達を可能にする新たな選択肢として注目されています。初期投資不要で長期的な電力価格の安定化が図れる一方で、長期契約に伴うリスクやコスト面での課題もあります。企業の規模や事業特性、サステナビリティ戦略に応じて、オフサイトPPAの導入を検討することで、効果的な再エネ電力調達が実現できる可能性があります。ただし、契約内容や長期的な影響を十分に精査した上で、導入を判断することが重要です。再生可能エネルギーの普及が進む中、オフサイトPPAは企業の脱炭素化を後押しする有力な選択肢の一つとなっていくでしょう。

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