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東電の「爆発した原発」は資産に計上されている?初心者にもわかる会計のカラクリ

「東京電力は、爆発した原発を現在も資産として計上しているのか?」
という疑問について、初心者にもわかりやすく解説していきます。

ニュースやSNSでは「東電は事故を起こした原発を今でも資産にしている」と話題になりますが、実際は少し複雑です。
結論から言えば、東電は福島第一原発を“発電できる資産”として残しているわけではありません。
ただし、廃炉に必要なお金を見込んだ「会計上の資産」としては残しているのです。

結論

「爆発した原発が資産に残っている」のは、
価値があるからではなく、撤去にお金がかかるから数字が残る
という会計上のルールによるものです。

「爆発した原発が資産に残っている」のは、
価値があるからではなく、撤去にお金がかかるから数字が残る
という会計上のルールによるものです。

なぜ「爆発した原発」が資産に残っているのか

理由①:会計上のルール「資産除去債務(ARO)」がある

企業が大きな設備を持つとき、将来それを壊す・撤去する費用を負債として計上します。
これを資産除去債務(ARO:Asset Retirement Obligation)といいます。

東電の場合も同様で、

  • 廃炉や撤去に必要な見込み金額を「負債」として計上
  • 同じ金額を「資産」としても記録

という形を取っています。

この「資産」は帳簿上の管理のための数字であり、実際に発電できる設備価値ではありません。

東電の実際の数字

項目内容金額(億円)
資産除去債務(負債)廃炉など将来の処理コスト約7,464億円
資産除去債務相当資産上記に対応する会計上の資産約1,200億円
特別損失(廃炉関連)デブリ取り出し・汚染水処理など約9,000億円

※出典:東京電力ホールディングス 有価証券報告書(2023年度)より

福島第一原発1〜4号機の現状

号機状況会計処理の扱い
1号機炉心溶融、建屋損壊廃炉措置中(価値ゼロに近い)
2号機デブリ取り出し計画進行中廃炉費用見込みあり
3号機燃料取り出し完了廃炉措置継続中
4号機燃料プールからの取り出し完了解体準備段階

いずれも「廃炉中の資産」として扱われ、発電資産ではなく、撤去対象の施設です。

それでも資産に残る理由

結論から言えば、

廃炉や除去に何兆円もかかるから、数字を残しておく必要がある

ということです。

たとえば、家を取り壊すときにも「解体費用」は帳簿上に残ります。
それと同じように、原発の撤去費用を会計上の資産として扱っているのです。

株式投資の視点で見ると

東電株に投資を考える場合、
この「会計上の資産」が何を意味するのかを理解しておくことが重要です。

■ 投資家が見るべきポイント

  • 「資産が多い=価値が高い」とは限らない
  • 廃炉コストが膨らむと、利益が減るリスクがある
  • 国の支援や電力政策によって業績が左右される

■ 東電株の特徴

評価軸内容
財務の安定性自己資本比率は低く、国の支援依存度が高い
将来性原発再稼働や再エネ事業次第で変化
リスク廃炉・賠償・訴訟など長期リスクが大きい
短期の材料政府発言や電力需給による急騰・急落あり

実際の廃炉費用はどのくらい?

  • 国の試算:約8兆円
  • 一部報道:最大22兆円以上の可能性

この金額は、東電が今後何十年もかけて支払う見込みのコストです。
そのため、「資産」が残っていても、それは未来の支出の裏返しということになります。

今すぐ買うべき銘柄?

理由

  1. 廃炉費用・賠償費用という巨額負債を抱えている
     福島第一原発の廃炉費用は国の試算で約8兆円。報道によっては22兆円規模とも言われます。
     今後も新しい費用が発生する可能性が高く、長期的な利益を圧迫します。
  2. 国の支援に依存しているため、政策リスクが高い
     東電の経営は国策によって大きく左右されます。
     再稼働が進めば上がる一方、原発反対世論や事故再発で下落リスクが高まります。
  3. 株価上昇の主因は“思惑”が多い
     「再稼働が進む」「電力自由化で見直し」など、ニュースで短期的に買われる傾向があります。
     実際の業績改善より、投機的な動きが中心になりやすいです。

具体例

2024年後半〜2025年前半の株価を見ると、再稼働報道や原子力政策の発表があるたびに急騰・急落を繰り返しています。
たとえば2024年10月の段階で700円台だった株価が、政府の原発政策発表後に900円近くまで上昇し、その後再び下落しました。

このように、材料ひとつで動くボラティリティ(変動性)の高い銘柄です。

再掲:投資判断の目安

観点評価コメント
短期(数週間〜数か月)再稼働・電力需給ニュースで短期上昇狙い可
中期(半年〜1年)政策の方向性次第ではリターンあり
長期(3年以上)×廃炉・賠償コスト、国の介入で成長性乏しい
リスク耐性が低い投資家×予測が難しく損失リスク大

買うべき人・買わないほうがいい人

結論内容
買うべき人ニュースを素早く追える短期トレーダー
買わない方がいい人安定配当・長期成長を重視する投資家
投資スタイルテーマ株(再稼働・国策)として一時的に買う
注意点国策・廃炉・賠償ニュースで急落リスクあり

まとめ

ポイント
東電は福島原発を発電資産ではなく「廃炉資産」として会計処理している
数字が残るのは「撤去費用」があるから
株を買うときは「資産の中身」を確認することが大切
投資判断では、再稼働・廃炉進捗・国の支援政策を重視すべき

おわりに

東電株は、表面上の数字だけでは判断できない“特殊な銘柄”です。
「資産が多いから安全」と思って買うと、廃炉費用や特別損失で思わぬリスクを負うこともありますのご注意ください。
参考担ったら幸いです。

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